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読んで良かった本、栄養になった本の記録です。

『それでも人生にイエスと言う』/V.E.フランクル

 

それでも人生にイエスと言う

それでも人生にイエスと言う

 

 こちらが先日の読書会で私が紹介した本。

フランクルの著書は、この他にもいくつか読みました。これの表紙の色違い3部作みたいなのとか、フランクルが提唱するロゴセラピーを日本で実践されている先生がまとめた本とか。代表作「夜と霧」はまだ。今のところこの『それでも人生にイエスと言う』が一番好き。表紙の色も好き。タイトルがまたとても好き。

 

心理学や精神分析関連の本を読むなら、フランクルより前の人達ーフロイトユングアドラー、おおよそ一般的にはフランクルより知名度があると思われる先人達ーの著書を先に読めばまた違ったのかもしれませんが、人間が何を軸として生きているのか、あるいは何に支配されて生きているのかについては、私にはフランクルの「意味(ギリシャ語でロゴス)」がとてもぴったりしっくりきました。同じ時期に宗教論の本も読んでいたけど、フランクルの持論に救われた部分の方が大きかった。前者も大いに勉強になりましたけれどもね。

 

私が参加している読書会では、紹介した人直筆のおすすめコメントカードと共に本がコーナーに飾られるのですが、私が書いたコメントは「どうして生きてるんだろう?何のために生きてるんだろう?その質問に答えます」。私含め、だいたいの人が一度や二度は必ず考えるようなこれらの問いに、フランクルがどう持論を述べているのかを読んでみてほしいなあと思って。割とこの本の最初の方で出てくるんだけど…。笑

 

ネタバレもいいとこだけど(すみません)、私は「自分が問われている側」という視点がまさにコペルニクス的転換で、うおーって思った。そこ本当に誰かにも読んでほしい!前述のような問いを持つ人にも持たない人にも。で、私が特に好きな箇所はこちら。

”こう考えるとまた、おそれるものはもうなにもありません。どのような未来もこわくはありません。未来がないように思われても、こわくはありません。もう、現在がすべてであり、その現在は、人生が私たちに出すいつまでも新しい問いを含んでいるからです。すべてはもう、そのつど私たちにどんなことが期待されているかにかかっているのです。その際、どんな未来が私たちを待ちうけているかは、知るよしもありませんし、また知る必要もないのです。” - p28

 

もうほんとにこの本を中学か高校の課題図書にしてほしいくらいある。笑 翻訳ならではの独特さは若干あるかもしれないけど、読みやすい方と思うし、多感な時期にこの本に出会っていたらもっと楽に生きられる子どもたちが増えるんじゃないかと勝手に思っている。もちろん、多感な大人たちにも大いにおすすめしたい一冊です。

 

第二次大戦時、陰惨たるナチスの収容所を生き延びたフランクルの持論は、あまりにピュアで意図せずとして”善”な側面もあり、読む人によっては受け入れがたい面もあるかもしれない。私は、人間の地獄を見てこそのそれだと思うと腑に落ちるところではあるんだけど、何よりこのフランクルの持論が収容中に編み出されたものではなく、収容される前から彼が考えていたもので、実際に収容中に生き延びる上での柱になり、実際に生き延びて出てこられた過程を思うとーそしてそれは彼だけではないことも含めー、”それでも人生にイエスと言える”持論の健固さを思わずにはいられません。精神病患者の臨床例や、彼が思うところのヒューマニズムなど、興味深いページも多々ありますが、私が推したい所は割と最初の方で出てきますので、ほんとに誰か読んでみてほしい。笑